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あおバスのおんな
青バスの女
辰野 九紫
「新青年」1929(昭和4)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,918 字 · 22 页
を見たものだ。それが一遍で覚えられた大西冬子嬢である。憤慨居士だってまだ若いんだ。少壮実業家の卵なんだから、美しいものを美しく評価するに無理はあるまい。公平こそは憤慨当否の最要力点ではないか。然し、青バス、円太郎を通じて珍らしい玉だなどと、敬意を表して名札を見たのが、公憤糾弾の役に立つのも変な廻り合わせである。それは兎に角として、僕惟うに、令嬢でも、芸者でも、女給でも、女群一座の中で美人と言われる女は、大抵それを自分に意識して、いやにつんとすましていて、愛嬌に乏しいのが多い。わが白襟嬢もその部類であるまいか。
却説、翌日の昼頃、広からぬ僕の家の玄関に、改まって人の訪ずれる声がする。女中が出たが、何やら見なれぬ人が要領を得ぬことを言っていると、又それがわけのわからぬ取次ぎ方である。恰度日曜なので、気軽に僕が応対に出たものだ。すると詰襟の洋服を着た五十過ぎの年輩の、尤もらしい顔のおっさんが来客である。
「私は青バス会社から参りました者で……」と皆まで聞かずおいでなすったなと、僕は心に独りで肯いた。
僕は前日の手紙に『大人気ない話だが、小生一個の問題でなく、多数乗客相手のことだから、今後の為めを思い、且つ無根の事実でない責任の所在を明かにして、住所姓名を名乗る』