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せいしゅん
青春
宮本 百合子
「婦人朝日」1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,799 字 · 16 页
そんな苦しい或る日、鎌倉の海岸に保養していた従妹たちのところへ遊びに行った。四つばかり年下の従妹はまだ結婚前で、従弟たちと心も軽く身も軽く、小松の茂った砂丘の亭で笑いたわむれている。そのなかに打ち交わりながら、自分の苦悩がこの若い人たちとは無縁であること、そして、自分の苦しみは見っともなくて重苦しいことを何と切なく感じたことだろう。午後になって、みんな海岸へ出かけた。暖かい晩秋の日光が砂丘をぬくめているところへ、一列に並んで腰をおろしていた従弟たちの一人が、やがて急に何を思いついたのか、一寸中学の制帽をかぶり直すとピーッと一声つんざくような口笛を鳴らして、体を横倒しにすると、その砂丘の急な斜面をころころ、ころころと、遠い下まで転って行った。びっくりしたように、あら、といって見ていた従妹も、声高く笑いながら派手な縞の着物の裾を抑えるようにして体を横にすると、わーといいながら同じように、その斜面をころがって行った。見ている私の喉一杯に、涙とも笑いとも名状しがたいものがつき上げて来た。裙を、ぴったりつけた脚の間に捲きこむようにすると、私はきつく目を瞑って、坐っているその場所から、体を倒して砂丘をころがって行った。