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せいしゅん

青春

宮本 百合子

「婦人朝日」1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,799 字 · 16 页

青空文庫

学校においても、家庭においても。

十五六のころ、こんなことがあった。私の父は建築家であったからいろんな画集をもっていた。折々静かな部屋でそれをくって見るのがいい心持であったが、その中に一枚、少女が裸で水盤のわきにあっち向きに坐って片手をのばして水盤の水とたわむれ遊んでいる絵があった。丁度自分と同じぐらいの年ばえの少女の背中は美しく少しねじられていて、しなやかな脇腹の撓みにうけている光線の工合なんか、自分が裸になってそうやって遊んだらどんないい気持だろうと思わせるような空気の爽かさにみちている。その少女は、二つにわけて組んだ髪を、うなじのところに左右から平たくもって来て、耳のうしろにまとめ、その両方の端にリボンをつけているのであった。

季節も春であったろうか。私はややしばらくその絵に見とれていたが、やがて、母の鏡の前へ行って、絵のなかにいた少女と同じような髪に結った。そして父がくれた濃い牡丹色のベルベットの小幅のリボンを飾り結びにしてつけた。

その髪に結って翌日学校へ行った。そしたら担任の女先生が、一時間目の授業が終るとすぐ、一寸のこっていらっしゃいといわれ、皆が列をつくって庭に出て行ってしまったあとのがらんとした教室の教壇の下で、髪についていわれた。