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せいしゅんろん
青春論
「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页
酒も亦、僕にはひとつの奇蹟である。
僕は碁が好きだけれども、金銭を賭けることは全く好まぬ。むしろ、かかる人々を憎み蔑むのである。大体、賭事というものは運を天にまかして一か八かというところに最後の意味があるのである。サイコロとルーレットのようなものが、本当の賭事なのだ。碁のような理智的なものは、勝敗それ自身が興味であって、金銭を賭けるべき性質のものではない。運を天にまかして一か八かという虚空から金がころがりこむなら大いに嬉しくもなろうけれども、長時間にわたって理智を傾けつくす碁のようなもので金銭を賭けたのでは、一番見たくない人間の悪相をさらけだして汚らしくいどみ合うようなもので、とても厭らしくて勝負などは出来ぬし、勝つ気にもなれぬ。ああいう理智的なもので金銭を賭ける連中は品性最も下劣な悪党だと僕は断定している。
然しながら、カジノのルーレットの如きもの、いささかの理智もなく、さりとてイカサマも有り得ない。かかるものも亦現実のもつ奇蹟のひとつである。人はあそこに金を賭けているのではなく、ただ落胆か幸福か、絶望か蘇生か、実際死と生を天運にまかせて賭ける人もいるのだ。