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せいしゅんろん

青春論

坂口 安吾

「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页

青空文庫

僕の青春論には、どうしても宮本武蔵が現れなくては納まりがつかないという定めがあるから、そのことは読んで理解していただく以外に方法がない。

大東亜戦争このかた「皮を切らして肉を切り、肉を切らして骨を切る」という古来の言葉が愛用されて、我々の自信を強めさせてくれている。先日読んだ講釈本によると柳生流の極意だということであるが、真偽の程は請合わない。とにかく何流かの極意の言には相違ないので、僕が之から述べようとする宮本武蔵の試合ぶりは、常に正しくこの極意の通りに外ならなかった。

然しながら「肉を切らして骨を切る」という剣術の極意は、必ずしも武士道とは合致しない所がある。具えなき敵に切りかかっては卑怯だとか、一々名乗りをあげて戦争するとか、所謂武士道的形式に従うと剣術の極意に合わない。「剣術」と「武士道」とは別の物だと言ってしまえば、正しくその通りであって、武士道は必ずしも剣道ではない。主に対する臣というものの機構から生れてきた倫理的な生き方全般に関するもので、一剣術の極意を以て律する事は出来難い所以であるが、逆に武士道から剣を律しようとして「剣は身を守るものだ」