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せいしゅんろん

青春論

坂口 安吾

「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页

青空文庫

という珍重すべき一書を遺した。

遊蕩三昧に一生を送った剣術使いだから夢酔先生殆んど文章を知らぬ。どうして文字を覚えたかと云うと、二十一か二のとき、あんまり無頼な生活なので座敷牢へ閉じこめられてしまった。その晩さっそく格子を一本外してしまって、いつでも逃げだせるようになったが、その時ふと考えた。俺も色々と悪いことをして座敷牢へ入れられるようになったのだから、まアしばらく這入っていてみようという気になったのだ。そうして二年程這入っていた。そのとき文字を覚えたのである。

それだけしか習わない文章だから実用以外の文章の飾りは何も知らぬ。文字通り言文一致の自叙伝で、俺のようなバカなことをしちゃ駄目だぜ、と喋るように書いてある。

僕は『勝海舟伝』の中へ引用されている『夢酔独言』を読んだだけで、原本を見たことはないのである。なんとかして見たいと思って、友達の幕末に通じた人には全部手紙で照会したが一人として『夢酔独言』を読んだという人がいなかった。だが『勝海舟伝』に引用されている一部分を読んだだけでも、之はまことに驚くべき文献のひとつである。

この自叙伝の行間に不思議な妖気を放ちながら休みなく流れているものが一つあり、それは実に「いつでも死ねる」