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せいしゅんろん

青春論

坂口 安吾

「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页

青空文庫

敵が全滅したとき、武蔵がふと気がつくと、袖に弓の矢が刺さっていたが、傷は一ヶ所も受けていなかった。

宍戸梅軒というクサリ鎌の達人と試合をしたことがある。クサリ鎌というものは大体に於て鎌の刃渡りが一尺三寸ぐらい。柄が一尺二寸ぐらい。この柄からクサリがつづいていて、クサリの先に分銅がつけてある。之を使う時には、左手に鎌を持ち、右手でクサリのほぼ中程を持ち、右手でクサリの分銅を廻転させる。講談によると、分銅と鎌とで交互に攻撃してくるように言うけれども、これは不可能で、離れている間は分銅はいつ飛んでくるか分らぬが、鎌の方は接近するまで役に立たない。だから離れている時は、分銅にだけ注意すれば良いのである。又、クサリ鎌の特色の中で忘れてはならぬことはクサリの用法で、これを引っぱると棒になるから、之で大刀を受けたり摺り外したり出来るのだそうだ。講談によると、クサリを太刀にまきつけたらもうしめたもので、クサリ鎌使いの方は落着いてジリジリ敵を引寄せるなどと言うけれども、そんな間抜けなクサリ鎌使いはいないそうで、分銅のまきついた瞬間には鎌の方が斬りこんでいるものだそうだ。