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せいしゅんろん

青春論

坂口 安吾

「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页

青空文庫

だが然し、持って生れた力量というものは、今更悔いても及ぶ筈のものではないから、僕に許された道というのは、とにかく前進するだけだ。

僕の友達に長島萃という男があって、八年前に発狂して死んでしまったけれども、この男の父親は長島隆二という往昔名高い陰謀政治家であった。この政治家は子供に向って、まともな仕事をするな、山師になれ、ということを常々説いていたそうで、株屋か小説家になれと言ったそうだ。

この話をその頃僕の好きだった女の人に話したら、その人はキッと顔をあげて、小説家は山師ですかと言った。

その当時は僕も閉口して、イエ、小説家は山師の仕事ではありません、と言ったかも知れないが(良く覚えていないのだ)今になって考えると、流石に陰謀政治家は巧いことを言ったものだ。尤も彼は山師の意味を僕とは違った風に用いているのかも知れないが、僕は全く小説は山師の仕事だと考えている。金が出るか、ニッケルが出るか、ただの山だか、掘り当ててみるまでは見当がつかなくて、とにかく自分の力量以上を賭けていることが確かなのだから。もっと普通の意味に於ても小説家はやっぱり山師だと僕は考えている。