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「せいびしょう」について

「青眉抄」について

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房、1953(昭和28)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,169 字 · 5 页

青空文庫

いるのは何故だろう。ロダンはそこで、自分の苦心努力ぶりを語ってはいない。美について、その発見と表現とその技法について語っている。別の言葉で云えば、自己の偉大さの秘密を、すっかり打ち開いている。その真率さにおいて益々彼は偉大であり、到達しがたい価値を感じさせるのである。

ゴッホの手紙は、どうだろう。セザンヌが絵に関して云ったことはどうだったろう。

松園があれだけ彼女としての精進を重ねて今日「青眉抄」をまとめたのだが、この随談随筆の中に、修業時代からマイステルに至る間に感服して見た古典、同時代人の作品などに一言もふれていないのは、奇異な感じがした。

師匠についてのみ語っている。縮写をよくしたこと、一心に描いたこと、それだけが語られている。

作家が自分の一生の半ばを顧みたとき、当然何かの影響をうけた――それに反撥したということも一つの影響である以上――何人かの作家が国の内外にあったことを認めずにはいられまい。

日本画家の精神のくみたてというものは、こんなに洋画の人々とはちがったものなのだろうか。

夜中に徹夜して描くということが云われている。私たちも夜はかきにくいものだろうと思っていた。