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せいあどうきだん

青蛙堂鬼談

岡本 綺堂

在线阅读岡本 綺堂《青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,438 字 · 238 页

青空文庫

それにしても、妹の伊佐子から何とか言って来そうなものだと思ったが、別に深くも気にとめないで、僕は自分の仕事の捗るのを楽しみに、宿屋から借りた古机に毎日親しんでいた。その月も中ごろになると紅葉見物の登山客がふえて来た。ことに学生の修学旅行や、各地の団体旅行などが毎日幾組も登山するので、しずかな山の中もにわかに雑沓するようになったが、大抵はその日のうちに磯部へ下るか、松井田へ出るかして、ここに一泊する群れはあまり多くないので、夜はいつものように山風の音がさびしかった。

「お客さまがおいでになりました。」

宿の女中がこう言って来たのは、十月ももう終りに近い日の午後五時頃であった。その日は朝から陰っていて、霧だか細雨だか判らないものが時どきに山の上から降って来て、山ふところの宿は急に冬の寒さに囲まれたように感じられた。丁度その時に僕は二階の座敷を降りて、入口に近いところに切ってある大きい炉の前に坐って、宿の者となにか例のおしゃべりをしている最中であったので、坐ったままで身体をねじむけて表の方を覗いてみると、入口に立っているのはかの赤座であった。彼は古ぼけた中折帽子をかぶって、洋服のズボンをまくりあげて、靴下の上に草鞋を穿いて、手には木の枝をステッキ代りに持っていた。