轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あおおにのふんどしをあらうおんな
青鬼の褌を洗う女
「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页
窮すれば通ず、困った時には自然に何とかなるものだ、というのが、私がこれまでに得た人生の原理で、私に母をたよる気持のないのも、私の心の底にこんな瘤みたいな考えがあるせいだろう。私は我まま一ぱいに育てられたけれども、たとえば母も女中も用たしにでて私一人で留守番をしてお料理はお前が好きなようにこしらえておあがりといわれていても、私は冷蔵庫のお肉やお魚には手をつけずカンヅメをさがす、カンヅメがなければ御飯にカツブシだけ、その出来あがった御飯がなければ、あり合せのリンゴやカステラの切はしだけでも我慢していられる。ペコペコの空腹でも私はねころんで本を読んでいるのだ。だから我まま一ぱいなどといっても空腹には馴れており、それも我ままのせいかも知れないけれども、我ままもまた相当に困苦欠乏に堪える精神を養成するもので、満堂数千の難民のなかで私が一番不平をいわないようだった。
私自身がそんな気持だから、人々の不幸が私にはそれはいうまでもなく不幸は不幸に見えるけれども、また、別のものに見えた。私には、たしかに夜明けに見えたのだ。
私はハッキリ母と別な世界に、私だけで坐っている自分を感じつづけていた。