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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页

青空文庫

私なら、君のようにいうことができる。しかし君のような若い娘がそんなふうにいうことを私は信じてはいけないと思うのだよ。私は君が本当に好きだから、私は君の幸福をいのらずにいられない。私のようなものに束縛される君が可哀そうになるのだよ」

「あなたの仰有ることの方が私にはわからないわ。好きだから、ほかの人と結婚しろなんて、嘘でしょう。ほんとは私がうるさくなったのでしょう」

「そうじゃない。いつか君が病気になったことがあった。君は気がつかなかったが、君は眠ると寝汗をかく、そのうちに、目のふちに薄い隈がかかってきたが、ねむるとハッキリするけれども目をひらくと分らなくなるので、君は気がつかなかったんだな。いくらか目のふちがむくんでもいた。その寝顔を眺めながら、私はそのとき心の中でもう肺病と即断したものだから、君が病み衰えて痩せ細って息をひきとる姿を思い描いて、それを見るぐらいなら私が先に死にたいと考え耽っていたものだった。私自身はもう私の死をさのみ怖れてはいない。それはもう身近かに迫っていることでもあるから、私は死をひとつの散歩と思うぐらい、かなり親しい友達にすらなっているのだ。