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ひじょうのあい
非情の愛
豊島 与志雄
「中央公論」1947(昭和22)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,831 字 · 24 页
然し、それだけでは片付けられないものがあった。この種の事柄がいつもそうであるように、話だけでは真相は掴めなかった。
この美春の一件は、吾々の中でもごく少数の者しか知らなかった。ただの話題とするには、あまりにばかばかしかったか、或はあまりに奇怪だった。秦啓源は最も深い関心を持ち、波多野を通じて、次回の祈祷に列席することの許しを得た。ところが前日になって、魚住千枝子が同じ許しを得てることが分った。西浦夫妻にとっては、信仰に垣根はなく、二人の願いを殊勝なものと見たらしい。但し、祈祷の現場には、彼等夫妻も遠慮して同席しなかったほどだから、ただ照顕さまの思召しに依って……という条件がついていた。
魚住千枝子がやって来ることを、波多野はへんに気にしていた。大田を通じて西浦夫妻に話がなされたというそのことではなく、照顕さまと彼女とを結びつけることに、なにか危惧めいた思いがあったらしい。
「女が出るべきところではないんだが……。」と彼は私に囁いた。
そしてその夜、七時頃であったろうか、照顕さまからお許しがありましたから……と西浦からの伝言があった時、波多野は眉根に深い皺を寄せたが、次には甚だしく冷淡な態度を取った。