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ひじょうのあい
非情の愛
豊島 与志雄
「中央公論」1947(昭和22)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,831 字 · 24 页
彼等がたとい愛し合ったとしても、そこには何の危険もなかった筈である。情熱そのものさえも、二人の間では非情めいていたろう。然し実は、そのための不安だったかも知れない。吾々は波多野の帰来を待ちわびながら、あまり彼のことを口に出さなかった。
何の音信もない五日の後、吾々が安心したことには、波多野と千枝子は帰って来た。波多野はいつもの通り無頓着な服装だったが、千枝子は珍しく洋装で、ビロードの服に薄茶の外套をまとっていた。そして二人揃って、「五郎」に蟹を食いに来た。波多野はたえず微笑しており、千枝子は人が変ったようによく笑った。
――それから後、「五郎」の二階は吾々のクラブみたいになり、研究室みたいになった。秦啓源も可なりの基金を出してくれた。然しこのことは他の物語に属するし、旦つは未だ将来のことに属する。