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めんせきのあつみ

面積の厚み

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十五巻(補遺)」河出書房、1953(昭和28)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,111 字 · 15 页

青空文庫

こんなやさしいことを、一人一人暗誦させられるのは極りの悪いことだとさえ思ったのにと思うと、彼女は自分でも思い掛けない心持がした。

けれども、どう考えても、何だか曖昧な、いい加減なところがあるようで堪(たま)らない。

縦と横とをかけると、面積が出る……。

誰がいつ、どこでそれを定めたのだろう。

そして、どうしてそれが永久の真理だと解って、皆が安心しているのだろう。

勿論彼女は、大人の学者の研究の偉大さに対しては、絶対的な尊敬を感じてはいる。

人間の体を組織している細胞の数が、四百兆あって、それだけを勘定するのに一千三百万年かかると云うことまで解らせた人のある話を聞いて、本当にされないようだった、新らしい記憶を持っている彼女は、縦と横とをかけて面積が出ると考えたことは、間違っているなどとは云おうとも思わなかった。

けれども、真個(ほんと)に納得が出来ない。

そして、最も妙なのは、あらゆる面積には厚みが無いということなのである。

先生は、面積に厚みは無いと、あれ程はっきり仰云った。そして、一言の説明もおつけなさらなかったのに、級中の皆はよく解っているらしい。