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おんがくのみんぞくせいとふうし

音楽の民族性と諷刺

宮本 百合子

「フィルハーモニー」1940(昭和15)年7・8月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,445 字 · 7 页

青空文庫

音楽にも民族の性格が顕著なのは自然だが、その自然なものを扱う手法には、種々の不自然さが生じているのが現代社会の一つの悩みであり、課題でもある。この間の「悲愴」の美しさから思いめぐらしても、音楽にある民族的な特性というものを、音楽の外からの解釈や説明でつけ加えても、それが芸術音楽としての内在的な充実感となって来ないということは、しみじみわかる。そしてまた、音そのものの記号の上にだけ民族的特徴をとらえたとして、それの羅列で作ったところで、やはり流動する生命のリズムとしての民族性は人の心をうつものたり得ないことが実感されたのも興味ふかかった。文学は、文字でかかれつつ文字の上にだけその生気をとらえているのでなくて、むしろ、文字から文字へのうつりの底に、流れ動き脈うつ芸術性を湛えている。音楽の日本的な要素のことがいろいろ問題になっているが、私たちにとって関心をひかれる点は、やはり、この音の記号の上での日本らしさの試みが、どのように音の流れそのものの生命が語る日本らしいものに成熟させられてゆくかということでないだろうか。

日本独特の日本らしいものというとき、今日の日本らしさが、どんな風に音楽には生かされてゆくものだろうかということも、難しくてしかも避けられない芸術家への課題だと思われる。