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おんぱのさつじん

音波の殺人

野村 胡堂

「新青年」1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,399 字 · 30 页

青空文庫

をあさって居りました。

「早坂さん、一寸お耳を」

昨夜からの籠城ですっかり、顔馴染になった岡崎敬之助は早坂勇の肩をそっと叩きます。

一緒に跟いて、二階の小部屋――置き忘れたような長四畳へ行くと、

「そんな事は警察の方には言えませんがね、私はね、あの拳銃は、ピアノを弾き乍らでも撃てると思うが、何うでしょう。ピアニストは、右手と左手に、全く異ったことをさせることも出来るでしょう」

「――――」

岡崎敬之助の言葉の意味は明かでした。早坂勇は思わず、顔を挙げて非難するともなくその反らした眼を追います。

「連弾を左手だけに預けて、右手に予て用意した拳銃を手巾に包んだままで取出し、自分の右に並んだ人の斜後ろから撃つのは容易じゃありませんか、丁度時計が十一時打つ時でもピアノの最高音と一緒にでも自由に撃てる――」

「そんなに近くから発射すれば、死骸に焼痕が残りますよ」

「三尺位は離せると思うが」

「それでも着物位は焦げるでしょう、あの通り肌の隠れるだけの薄い洋装だったし」

早坂勇は反感を抗議と一緒にさらけ出しました。

「が、手巾で寛く銃口を包んで撃てば、それは緩和出来ると思う、その手巾さえ隠す時間があれば――」