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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

05 ねずみ

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,527 字 · 23 页

青空文庫

「なにか、あッしども、しくじりでも……」

「笑わせるな。しくじりなんて気取った段じゃねえ。……なんだ、今度のざまア。てめえら、それで生きているのか、性があるのか」

「な、なんですか、一向にどうも……」

「ざまア見ろ、そんなすッ恍けたことを言ってやがるから、しょうべん組などに出しぬかれるのだ。おい、俺の面をどうする」

「ですから、どういう……」

「聞きたけりゃァ言って聞かしてやる。……番代りの晦日に伝馬町の堺屋へ検死に行ったのはどいつだ。……嘉兵衛と鶴吉を虎列剌と判定てうっそり帰って来たのは、いってえどいつだ。言え、この中にいるだろう」

大風に吹かれた下草のようにハッとひれ伏してしまう。

藤波は、キリキリと歯軋りをして、

「いかに虎列剌がこの節の流行物でも、吐瀉下痢して息をひきとれば、これも虎列剌ですはひどかろう。いってえ、おめえらの職業はなんだ。……おい、よく聞け。呉服橋ではぬからずに手代の忠助をひっ撲いて、わたくしが毒を盛ったのでございますと泥を吐かしたそうな。……当節、番所は呉服橋だけにある。南じゃ朝っぱらから色ばなし。……いや、見あげたもんだ、感じ入ったよ」