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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

03 都鳥

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,604 字 · 28 页

青空文庫

時々、金助町の叔父の邸へ出かけて行って、なんだかんだとおだてあげて小遣をせしめると、襟垢のついた羽二重の素袷で、柳橋の梅川や中洲の四季庵なんていう豪勢な料理茶屋へ、懐手をしたまま臆面もなくのっそりと入ってゆき、かくやの漬物で茶漬を喰い、小判一両なげ出してスタスタ帰ってくる。このへんは、なかなかふるっている。

掬うほどの煙草もなくなったと見え、畳の上へ煙管を投げ出してつまらなそうな顔をしているところへ、

「おいでですか」

と、声をかけながら、梯子段から首を出したのが、れいの神田の御用聞、ひょろりの松五郎。

「相変らず、つまらなそうな顔をしていますね。……くすぶってばかりいねえで、ちとお出かけなさいませ。身体の毒ですぜ」

顎十郎は、気のなさそうな声で、

「すき好んで逼塞しているわけじゃないが、先立つものは金でな、やむを得ず、苔を生している」

「そんなら、金助町へお出かけになりゃあいいのに」

「再々でな、その手もきかん。……どうだ、ひょろ松、近頃、叔父に売りつけるような変ったことはないか」

ひょろ松は、かんがえていたが、すぐ膝を拍って、

「ありました、ありました。