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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
17 初春狸合戦
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,819 字 · 26 页
「いや、よしましょう。そんな話に乗っちゃいけません、馬鹿々々しい」
「なんで、馬鹿々々しいな?」
「だって、そうじゃありませんか。小判と見せて、実は木の葉。一文にもならないのに、豊島くんだりまで狸をかついで行くテはないでしょう」
とど助、大きくうなずいて、
「いや、これは大しくじり。いかにもそうだ。……これ、狸、せっかくだが、その話はことわるよ」
狸は、あわてて手を振って、
「じょ、じょ、冗談。……どうして、そんな人の悪いことをいたすものですか、木の葉などを使いますのは、酒買いに行く小狸のいたずらで、わたしどもは、そんな見識のないことはいたしません。禿狸の沽券にかかわります」
と言いながら、二ツ折から小判を一枚とりだして、とど助に渡し、
「どうぞ、充分におあらためくださいまし、これが木の葉なんぞでございますものか」
とど助、受けとって提灯の光でためつしかめつしていたが、
「こりゃア驚いた。これはいかにも宝永乾字。いたって性のいい小判だが、こんな古金をどこから持って来るのだ」
「こんなことはわけもない。……安政や万延の新小判なら、とてもわたくしどもの手には入りませんが、こんな古金ならいくらでも持ってまいります」