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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

17 初春狸合戦

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,819 字 · 26 页

青空文庫

とど助のほうは、これはどう見たって浪人くずれ。それも、なみの武士じゃない。いわば、出来そくない。

身の丈五尺九寸もある大入道の大眼玉。容貌いたって魁偉で、ちょうど水滸伝の絵にある花和尚魯智深のような面がまえ。

それだけならまだいいが、アコ長のほうはせいぜい五尺五六寸の中背だから、このふたりが差しにないということになると、駕籠はいきおい斜め宙吊りとあいなり、客はツンのめったままで行くか、あおのけになって揺られるか、いずれにしても、普通には行かない。これじゃ、だれだって恐れをなして逃げ出してしまう。

アコ長は、水ッ鼻をすすりながら、マジマジととど助の顔を眺めていたが、いまいましそうに舌打ちをして、

「……思うにですな、とど助さん、今日のあぶれは、こりゃアあんたのせいなんですぜ」

「これは聞きずてならん。なんでわしのせいか」

「だって、そうじゃありませんか。わたしとあんたがこの商売をはじめる当初から、あんたは客呼びをしない約束になっていたはずです」

「そうだったのう」

「そうだったのう、じゃありませんよ。あんたのような、見あげるような入道が、大眼玉をむいて、おいこらア、駕籠にのれ、安くまいるぞ、じゃ、だれだって逃げ出してしまいます」