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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

17 初春狸合戦

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,819 字 · 26 页

青空文庫

後はわしが引きうけたから、我善坊の泥鰌屋へ行こう」

「でも、あのへんは伊勢駕の繩張だから、下手なことをすると、ぶったたかれますぜ」

「なあに、かまわん、かまわん。わしがうまい工合にやる。心配せんとついて来まっせ」

空駕籠をかついで仲町から飯倉片町のほうへやって来ると、おかめ団子のすじかいに、紺暖簾に『どぜう汁』と白抜にした、名代の泥鰌屋。駕籠舁、中間、陸尺などが大勢に寄って来てたいへんに繁昌する。

泥鰌鍋のほかに駕籠宿もやっているので、奥まった半座敷には、駕籠舁の若い者がいつも十人二十人とごろっちゃらしている。

軒下へ駕籠をおしつけておいて、暖簾をわけて入って行くと、やっと松がとれたばかりの正月の十日。どいつもこいつも大景気。人数にして三十人ばかり、丸煮やら柳川鍋やら大湯呑に鬼菱というのを注がせて、さかんに煽りつけている。

すいた床几へようやく割りこんだアコ長ととど助。けさっからの大旱魃なもんだから、たちまち咽喉を鳴らし、

「いやどうも、たまらん匂いがする」

「匂いはいいが、とど助さん、後のところは大丈夫でしょうね」

「くどく念をおす必要はない。たしかに、わしが引きうけた。