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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
04 鎌いたち
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,783 字 · 22 页
ひょろ松は、へこたれて、
「うけあうという訳にはいきませんが、まあ、ひとつやってごらんなさいまし」
「まあ、じゃ、いやだ。おまえが、かならず、うけあうといわなきゃア、この辺で水を蹴ッくらかえして釣れないようにしてやる」
「こりゃアおどろきましたな。……じゃ、まあ、うけあいますからやってごらんなせえまし」
顎十郎は、ニヤリと笑って、
「よし、とうとううけあうとぬかしたな。きっとおれに釣らせるな。……ときに、ひょろ松、おれが釣ろうというのは、腹の白っこい、指ほどの鱚じゃねえんだぜ」
「へへ、じゃ、鉄炮洲で赤穂鯛でも釣ろうとおっしゃるんですかい」
顎十郎は、首をふって、
「いや、もっと大きい」
「ごじょうだん。……じゃ、三崎の真鰹でもひきよせようッてんですかい」
「どうして、まだまだ」
顎十郎のいい方はすこし憎体である。
ひょろ松はムキになるたちだから、ムッとして、
「じゃア鯨でも」
顎十郎は渚に棒杭立ちになったまま、ながい顎の先をつまみながら、
「いや、そうまで大きくはない」
「それじゃアあっしにはわかりかねまさ。……夕風に吹かれながら、こんなところであなたと魚づくしをやる気はねえのだから、鮫なと海坊主なとお好きなものをお釣りなせえ。