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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

07 紙凧

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,327 字 · 43 页

青空文庫

ひょろ松は気を悪くして、

「なにを、のんきなことを言っているんです。……凧なんぞどうでもいい、ともかく内部へ入りましょう」

「まあまあ、急ぐな。……公事にも占相ということが与って力をなす。……おれは、いま金座の人相を見ているところだ」

のんびりと川むこうを指さし、

「……神田川をへだてて、むかいは松平越前守の上屋敷。……西どなりは、鞘町、東どなりは道路をへだてて石町……。どちらの空を見ても、清朗和順の気がただよっているのに、金座の上だけに、なにやら悪湿の気が靉いている。……なるほど、このなかには、二百人からの人間が籠の鳥同然に押しこめられ、他人のために朝から晩までせっせと小判をつくっている。ひとの恨みと金の恨みがあいよって、それで、こんな悪気が立ちのぼるのだろうて……」

ひょろ松は、へこたれて、

「どうも、あなたが喋りだすと、裾から火がついたようになるんで、手がつけられねえ。……さあさあ、もう、そのくらいにしておいてください」

「……よしよし、では入ってやるが、だが、ひょろ松、くどいようだが、叔父の禿げあたまには極内だぞ」

「それは、嚥みこんでいますが、どうして、そうまで金助町に内証にしたがるんです。