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かお

顔

宮本 百合子

「中央公論」1924(大正13)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,099 字 · 23 页

青空文庫

娘共はずるく牒し合わせ、わざとのろのろ暇をかける。フランツが手を怠(だる)くして枝を離すと、彼が余り早く手離したと云って怒った。怒りながらふきだした。

虫食いの不具な果でもつかむと、彼女達は、

「いやなフランツ! 虫っくい」

と、彼にその果をぶっつけた。

はははは。もっとぶっつけろ、もいだ胡桃をみんなぶっつけろ! フランツは樹に登るぞ。彼は登った。乾いて好い匂いのする葉の間へ本当に隠れた。そして、ばらばら枯れ葉をお下髪(さげ)の頭にふるい落す。

が、またいつの間にかするする裏板から辷り降り、上ばかり見上げている娘達の鼻先に、ばっさり好い枝を引き下げて、愕かすのだ。

楽しい胡桃山の上に日が移った。

樹々が長い濃い影を地に落す時刻になると、再び村長の杖が皆をかり集めた。

若い者達は、村まで歩いて帰ることになった。荷馬車は村長と胡桃を載せて、謝肉祭の山車のように列の真中に割り込んだ。

フランツはエルンストに会い、暫く彼と一緒に歩いた。

山合いの曲った草道を抜けると、路は、なだらかな傾斜の耕地に出た。遙か遠くに村の教会の塔が見え、頂の十字架が、西日でキラキラ燃えるように光った。