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かお
顔
宮本 百合子
「中央公論」1924(大正13)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,099 字 · 23 页
神は、思いも設けない時計屋の子の自分にこんな特別な相貌を与え、神の子を顕させようとするのか。または、本当に恐ろしい悪魔の力が自分に悪戯したのだろうか。
フランツは、寝床を出て、水のような光りにさらされている木のむき出しの床に跪いて永いこと祈った。寥しい、胸の引きしめられる苦しさが起って、彼は涙を流した。
もう到底平気で父に貰った聖画の基督を見ることは出来なくなった。万聖節の晩、父親が何故あの絵の傍に自分を立たせたか解るとともに、その記憶は、彼に、いくら十字を切っても切りきれない、堪え難い心持を起させるのであった。フランツは、裸足のまま立上って、机の傍へ行った。そして、顔をそむけて、そちらを見ないようにして、少年イエスの画像を暗い壁の上からとりおろした。
底本:「宮本百合子全集 第二巻」新日本出版社
1979(昭和54)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第二巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「中央公論」
1924(大正13)年1月号
入力:柴田卓治
校正:渥美浩子