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かぜとひかりとはたちのわたしと

風と光と二十の私と

坂口 安吾

「文芸 第四巻第一号(新春号)」1947(昭和22)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,154 字 · 30 页

青空文庫

非常な癇癪もちで、だから小心なのであろうが、やたらに当りちらす。小使だの生徒には特別あたりちらすが、学務委員だの村の有力者にはお世辞たらたらで、癇癪を起すと授業を一年受持の老人に押しつけて、有力者の家へ茶のみ話に行ってしまう。学校では彼のいない方を喜ぶので、授業を押しつけられても不平を言わなかった。腹が立つと女房をブン殴ったり蹴とばしたり、あげくに家をとびだして、雑木林や竹藪へはいって、木の幹や竹の木を杖でメチャクチャに殴っている。それはまったく気違いであったが、大変な力で、手が痛くないのか、五分間ぐらいも、エイエイエイ、ヤアヤアヤアと気合をかけて夢中になぐっている。

この節の若者は、とか、青二才が、とか口癖であったが、私は当時まったく超然居士で、怒らぬこと、悲しまぬこと、憎まぬこと、喜ばぬこと、つまり行雲流水の如く生きようという心掛であるからビクともしない。尤も私に怒ると転居されて下宿料が上らなくなる怖れがあるから、そういうところは抜目がなくて、私にだけは殆ど当りちらさぬ。先生は全部で五人で、一年の山門老人、二年の福原女先生、三年の石毛女先生、この山門老人が又超然居士で六十五だかで、麻布からワラジをはいて歩いて通ってくる。