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ガドルフのゆり
風の又三郎
宮沢賢治『風の又三郎』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ガドルフの百合、マグノリアの木、とっこべとら子、祭の晩、なめとこ山の熊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,150 字 · 48 页
道はまるっきりコンクリート製の小川のようになってしまって、もう二十分と続けて歩けそうにもありませんでした。
その稲光りのそらぞらしい明りの中で、ガドルフは巨きなまっ黒な家が、道の左側に建っているのを見ました。
(この屋根は稜が五角で大きな黒電気石[※3]の頭のようだ。その黒いことは寒天だ。その寒天の中へ俺ははいる。)
ガドルフは大股に跳ねて、その玄関にかけ込みました。
「今晩は。どなたかお出でですか。今晩は。」
家の中はまっ暗で、しんとして返事をするものもなく、そこらには厚い敷物や着物などが、くしゃくしゃ散らばっているようでした。
(みんなどこかへ遁げたかな。噴火があるのか。噴火じゃない。ペストか。ペストじゃない。またおれはひとりで問答をやっている。あの曖昧な犬だ。とにかく廊下のはじででも、ぬれた着物をぬぎたいもんだ。)
ガドルフは斯う頭の中でつぶやきまた唇で考えるようにしました。そのガドルフの頭と来たら、旧教会の朝の鐘のようにガンガン鳴っておりました。
長靴を抱くようにして急いで脱って、少しびっこを引きながら、そのまっ暗なちらばった家にはね上って行きました。