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ふうきんとさかなのまち

風琴と魚の町

林 芙美子

「改造」1931(昭和6)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,372 字 · 27 页

青空文庫

だろうがや」

「警察へ行っても駄目かや?」

「誰もそんな事知らんと云うて、皆、笑いまくるぞ」

「そんでも、悪いこつすれば怒るだろう?」

「誰がや?」

「人の足折って、知らん顔しちょるもんがよオ」

「金を持っちょるけに、かなわんたい」

「階下のおじさんな、馬鹿たれか?」

「何ば云よっとか!」

父は風琴と弁当を持って、一日中、「オイチニイ オイチニイ」と、町を流して薬を売って歩いた。

「漁師町に行ってみい、オイチニイの薬が来たいうて、皆出て来るけに」

「風体が珍しかけにな」

長いこと晴れた日が続いた。

山では桜の花が散って、いっせいに四囲が青ばんで来た。

遠くで初蛙も啼いた。白い除虫菊の花も咲いた。

7 「学校へ行かんか?」

ある日、山の茶園で、薔薇の花を折って来て石榴の根元に植えていたら、商売から帰った父が、井戸端で顔を洗いながら、私にこう云った。

「学校か? 十三にもなって、五年生にはいるものはなかもの、行かぬ」

「学校へ行っとりゃ、ええことがあるに」

「六年生に入れてくれるかな?」

「沈黙っとりゃ、六年生でも入れようたい、よう読めるとじゃもの……」

「そんでも、算術はむずかしかろな?」