轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふうちそう

風知草

宮本 百合子

「文芸春秋」1946(昭和21)年9~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,107 字 · 88 页

青空文庫

そして低い声で、

「あるくのも、一緒でいいねえ」

と云った。ひろ子は、微に上気して重吉を見た。重吉は、あたりの乗客たちを全く見ていなかった。しかし、ひろ子を見ているのでもなかった。視線は窓の外を駛りすぎる外景に吸いよせられている。重吉の手と重吉の声とは、もしかしたら重吉が心づかないうちに、こうして生活はとりかえされた、という抑えがたい感銘を表現したのかもしれなかった。

夕闇の林間道をあるきながら、重吉は、

「今ごろ、電車、どうだろう」

と云った。

「こみかた?」

「来たとき位ならいいね」

「ひどいと思うわ、時間がよくないんですもの」

その駅にどっさりの乗客が待っているというのではなかったが、灯をつけて走って来た電車は満員だった。

「どうなさる?」

列に立っている重吉の背中を押すようにしながらひろ子があわてて相談した。

「おいや? あとだと、一時間待つのよ」

重吉は、黙って一寸躊躇した。

「のってしまいましょう、あんまりおそくなるわ」

そう云いながら、ひろ子は自分の体ごと重吉を車内におしこんだ。重吉は、ほかの乗客の足をふむまいとして無理な姿勢で立って、発車するとき、ひどくよろけた。