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ふうぼう

風貌

小山 清

――太宰治のこと

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,448 字 · 32 页

青空文庫

いつ死んでも悔いのないように、好きな人にはこだわりなく好きだと云っておけと云っていたが、すべてにそんなところがあった。見ていてはらはらするほど率直なところがあった。その後、田中英光君に会ったとき、田中君は「太宰さんは傘張剣法だから好きさ。」と云った。私が太宰さんは僕たちにとって Last man だと云ったら、田中君は Last one だと訂正した。太宰さんが甲府を焼け出されて金木へ行く前、三鷹の家で太宰さん、亀井さん、田中君、私の四人で別離の小宴を催した。亀井さんだけ早く帰った。こういう席で一人早く座を立つのは貧乏くじを引くようなものである。亀井さんは後に残った三人の間でいまのはやり言葉で云えば吊し上げになった。太宰さんは津軽人の所謂ごたくを並べていた。私が「亀井さんには面と向かって、おれが死んだら、全集の編輯を頼むなんて云っている癖に。」と難詰したら、太宰さんは真顔で、「僕はほんとに亀井君に全集の編輯を頼むつもりだよ。亀井君だって、いいところもあれば、悪いところもあるさ。」と云った。太宰さんは私に向かって、「おれは小山には云うことがあるんだ。