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ふうぼう
風貌
小山 清
――太宰治のこと
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,448 字 · 32 页
私がしばらく御無沙汰をしていると太宰さんは安否を問うて来た。筑摩書房で出した、チエホフとゴルキイの往復書簡を送ってくれたこともある。この本は「風の便り」を書く上に参考にされたのではないかと思う。こんな風の便りが舞い込んだこともある。「どうして居りますか。毎日、すこしずつでも書いて居りますか。君自身を、大事にして下さい。信じて、成功しなければならぬ。別に三鷹へ、わざわざ来なくてもいいから、すこしずつでも書きすすめていて下さい。(一日に一行でも)」たまには顔を見せろというのであろう。私は三鷹に留守番中、金木にいる太宰さんに、初めて無心をしたことがある。太宰さんから小切手が送られてきたが、二つに折った小切手の間からスズランの花が出てきた。太宰さんは風邪臥床中のようで、「庭にいまスズランが咲いていて、園子がとって来て、私の枕元に置いて行きました、同封します。」と書いてあった。けれども折角送られてきた小切手は、すぐには使用不可能であった。私は早速太宰さんに送り返したが、そのとき私は真似をして、三鷹の家の庭先に咲いていたなにやら紫色の花を小切手の間に挿んで送った。