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ふうぼう
風貌
小山 清
――太宰治のこと
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,448 字 · 32 页
」と云ったら、太宰さんは目を光らせて、「君は僕たちをちっとも笑わせてくれないじゃないか。笑わせてくれよ。」と口を尖らせた。十年の師に対して、私がいつも飼われたばかりの犬のような顔をしているのが、物足りない気がしたのであろう。私が附添をしていた少年は、入院してから目方を量る度毎に体重が増えていき、食慾もあって、その後の経過は順調であった。私が「やっぱり板前がいいせいでしょうね。」と自慢顔をしたら、太宰さんは顔を綻ばせて、「いや、それは必ずや抵抗療法というものに違いない。小山の板前じゃ思いやられるよ。」と応酬した。二人で夜帰ってくる道で、「家庭というものはいいものだよ。」と私に云ったこともある。
北海道へ行ってから、私は長い間便りをしなかった。私の筆不精からであったが、一つは躯を悪くして生活が順調に行っていなかったので、つい便りをする気にならなかった。
しばらく御無沙汰をしていたが、太宰さんの許に預けてきた私の原稿の一つが、ある雑誌に採用になった時、太宰さんから葉書をもらった。その稿料を送るについて、私の住所を確めるものであった。「塚より外に住むばかり」