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ひだのかお
飛騨の顔
「別冊文藝春秋 第二三号」1951(昭和26)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,316 字 · 31 页
しかし、女の脂肪によってあのコブコブの間にある谷が埋まって平になった場合には、それはまるいツルツルした仏像の顔になるのである。
高山の長瀬旅館の女中にヒダの河合村の生れの娘がいた。この村の字月ヶ瀬というところで仏師止利が生れたという伝説がある。彼女はその隣り字の明ヶ瀬で生れたのである。彼女の顔は国分寺の薬師サマのようにマンマルでポチャ/\した顔であった。
「至るところに仏像がいらア」
このポチャ/\した顔はヒダの顔というよりも、雪深い北国の農村の代表的な顔のようだ。もとはヒダであったかも知れない。今では日本的な顔の一ツ、特に農村の娘の典型的な顔の一ツであろう。
ヒダの郷土史料のことでいろいろ手数をわずらわした田近書店という古本屋の主人が、現在のヒダのタクミに会っては、とタクミ某に会うことをすすめてくれた。私もはからざるタクミの名作に接して、甚しく驚嘆したことであるから、大いに会ってみたくもあったが、田近屋自身が現在はタクミの技術が劣えている時だと云う通り、タクミの技術には時代によって上下があり、いつも名人がいるというワケではないし、名人がそうザラにいるとは考えられないのである。