轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しょくよく
食慾
豊島 与志雄
「中央公論」1935(昭和10)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,672 字 · 20 页
もしも……もしも……私と木村さんとが、抱きあって、唇でも……。見ると、木村さんは、皮膚に血の気の浮いた顔をして、子供のように純真な眼付をしています。私も子供のようでした。二人は手を取りあっても、おんぶしても、抱きあっても……決して不自然ではなかったでしょう。それを、野口はどうして引止めようともしないのでしょう。僅かばかりの嫉妬の気持さえ感じないのでしょうかしら。私はそんなに無視されてもいいものでしょうかしら。……何かえたいの知れない熱いものが、胸の底からこみあげてきて、私は頬がひきつるのを感じながら、つっ立って木村さんを見つめました。木村さんは卒直な驚きの表情で、眼をまるくして、近寄ってきました。私はくるりと後ろを向きましたが、とっさに、涙が出てきて困りました。駆け出して、溝の中にとびこんで、涙をふきましたが、あとは、へんに白々として淋しい気持で、木村さんがやって来ても、口を利く気がしませんでした。「どうかなすったのですか。」「いいえ……。」そして私は強いて微笑みましたが、なぜか、蒼白い微笑というような感じが胸にきて、妙に身体の硬ばるのを覚えました。