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きがちたいをあるく
飢餓地帯を歩く
下村 千秋
――東北農村惨状報告書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,478 字 · 31 页
「私も、始めて赴任して来た当時はびっくりしました。何しろ、生徒の大部分は、いつも泥だらけの手足をしている。風呂へ入らないどころか、手足もろくに洗わないのです。で、それを注意したところがこんど来た校長は変な人だ。ひるに、手足を洗えと言った、と言って、あべこべに私が非難されたですから」
「それじゃ、教育程度もずいぶん低いですね?」
「さようです。子供の入学年齢が来ても、たまたま役場からの通知漏れがあったりすると、その子供が九つになっても十になっても学校へ入れようとはしません。それから、農繁期になりますと、学校よりゃ野良仕事が大事だと言って、めったに学校へは出て来ない子供が多いです」
「それじゃ、村の百姓達の人情、人気はどうでしょう?」
「その点はまた実に純朴です。恐らく日本中で、一番純朴な人達ではなかろうかと思います。その一つの証拠でありますが、最近、この村の青年訓練所の人達が、在満軍人慰問金を集めるために、活動写真をやりました。一人十銭の入場料で、この学校の生徒もその切符を買うようすすめられましたが、何しろこの不況と凶作とで、百姓達は一銭の金も持っていません。