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きがちたいをあるく

飢餓地帯を歩く

下村 千秋

――東北農村惨状報告書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,478 字 · 31 页

青空文庫

老爺はいろいろの凶作話の末にこういったのである。

「いよいよ食うものが無くなりゃ、こんどは金で買わなければならねえが、その金を取るにゃ、この地方ではこの炭焼きするより外の方法はねえでさア。だが、この炭材は、官有林から払い下げにゃならねえで、それが現金でなくっちゃいけねえですから、先ずそれで困るでがす。それからやっと炭材を買い込んで、こうしてかまで焼いた炭が――楢の上等の五貫目俵が、たった四十五銭ですからな。それもこのかま一つからやっと二十俵で、日数にすれば五日はかかります。五日で二十俵、売って九両ですが、炭材代を差し引くと、残るのが五十銭か六十銭、一日やっと十銭の稼ぎというわけです……」

ここで私は、少々訊き難いことであったが、思いきってこう訊いて見たのであった。

「それでは、僅かの金のために、娘を売るような家もあるでしょうね?」

すると老爺は、何んにも言わず、静かに首を廻して私の額を見詰めた。炭がまの熱に焼かれた赤黒い皺だらけの顔であったが、それがやがて笑うとも泣くともつかぬ顔に変ると、こう言ったのである。

「お前さんは知っているかどうか。山に吹雪が来る時は、その山中の小鳥共はチンとも啼かねえもんです。