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あめチョコのてんし

飴チョコの天使

小川 未明

「赤い鳥」1923(大正12)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,597 字 · 10 页

青空文庫

これから、またほかの村へ、まわったのかもしれません。同じ工場で造られた飴チョコは、同じ汽車に乗って、ついここまで運命をいっしょにしてきたのだが、これからたがいに知らない場所に別かれてしまわなければなりませんでした。もはや、この世の中では、それらの天使は、たがいに顔を見合わすようなことはおそらくありますまい。いつか、青い空に上っていって、おたがいにこの世の中で経てきた運命について、語り合う日よりはほかになかったのであります。

びんの中から、天使は、家の前に流れている小さな川をながめました。水の上を、日の光がきらきら照らしていました。やがて日は暮れました。田舎の夜はまだ寒く、そして、寂しかった。しかし夜が明けると、小鳥が例の木立にきてさえずりました。その日もいい天気でした。あちらの山あたりはかすんでいます。子供らは、お菓子屋の前にきて遊んでいました。このとき、飴チョコの天使は、あの子供らは、飴チョコを買って、自分をあの小川に流してくれたら、自分は 水のゆくままに、あちらの遠いかすみだった山々の間を流れてゆくものを空想したのであります。

しかし、おかみさんが、いつかいったように、百姓の子供らは、十銭の飴チョコを買うことができませんでした。