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もちのタタリ

餅のタタリ

坂口 安吾

「講談倶楽部 第六巻第一号」1954(昭和29)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,869 字 · 18 页

青空文庫

そこで自分の代になると、正月は餅をついて食うことにした。

その餅をつくためのウスとキネを町で買って村へ戻ってきたとき、村境にでて助六を待っていたのは村の有志十名あまりで、その先頭に平吉がいた。彼は皆を代表して助六をさえぎって云った。

「そのウスとキネはこの村の中には一歩も入れられない」

「なぜだ」

「そういうものでスットンスットンやると、餅を食べたことのない御先祖様御一統の地下の霊がおどろいてお騒ぎになる。また村の神様のタタリもあろう。村に不吉なことが起るから、そのウスとキネは一歩も村の中に入れられない」

「そのタタリというのは、いまお前さん方が無法にも人の通行を邪魔してることだ。天下の公道の中にウスとキネの関所があるのは聞いたことがない。もしも、たってさえぎると、お前さん方は法律によって牢にはいることになる。それがタタリというものだ。そのほかにタタリがあったら、お目にかかろう」

助六はこう見栄をきった。そしで荷車をひく人足にきびしく前進の命令を下した。十名あまりの有志の中にたってさえぎる勇者が一人もいなかったので、平吉も涙をのんでウスとキネの侵入を見送らなければならなかった。