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えきふにっき
駅夫日記
白柳 秀湖
「新小説」1907(明治40)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页
に入学させて、貞子にその教育を頼んだ。高谷千代子は「窮行女学院」のお客様にあたるのだ。
賤しい女の腹に出来たとはいうものの、生まれ落ちるとそのままいまの乳母の手に育てられて淋しい郊外に人となったので、天性器用な千代子はどこまでも上品で、学校の成績もよく画も音楽も人並み優れて上手という、乳母の自慢を人のいい駅長なんかは時々聞かされるということであった。
私は始めて彼女のはかない運命を知った。自分ら親子の寂しい生活と想いくらべて、やや冷めたい秋の夕を、思わず高谷の家の門のほとりに佇んだ。洒然とした門の戸は固く鎖されて、竹垣の根には優しい露草の花が咲いている。
七
次の日の朝、私は改札口で思わず千代子と顔を合わせた。私は千代子の眼に何んと知れぬ一種の思いの浮んだことを見た、私は千代子のような美人が、なぜ私のような見すぼらしい駅夫風情に、あんな意味のありそうな眼つきをするのだろうと思うとともに今朝もまた千代子を限りなく美しい人と思うた。
今日は岡田が休んだので私は改札もしなければならないのだ。
客は皆階壇を下りた、私は新宿行きという札をかけ変えて、一二等の待合室を見廻りに行った。