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えきふにっき
駅夫日記
白柳 秀湖
「新小説」1907(明治40)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页
助役は別に深い意味で言うたわけでもなかったろうけれど、私にとっては非常に恐ろしい打撃であった。ほとんど脳天から水を浴びせられたように愕然として見上げると磯は、皮肉な冷笑を浮べながら立っていた。
「お千代さんがよろしくって言ったぜ、どうも御親切にありがとうッて……」
「だって私は自分の……」
とまでは言うたが、あとは唇が強張って、例えば夢の中で悶え苦しむ人のように、私はただ助役の顔をジッと見つめた。
「君! 腹を立てたのか、馬鹿な奴だ、そんなことで上役に怒って見たところで何になる」
私は怒ったわけじゃなかッたけれども、助役の語があまり烈しく私の胸に応えたので、それがただの冗談とは思われなかったからである。
私は初めから助役を快よく思うていなかったのが、このこと以来、もう打ち消すことの出来ない心の隔てを覚えるようになったのである。
八
「ちょいと、マア御覧よ、こんどはこんなことが書いてあってよ」と一人が小さい紙切を持ってベンチの隅に俯伏すとやっと、十四五歳のを頭に四五人の子守女が低い足駄をガタつかせて、その上に重なりおうててんでに口のなかで紙切の仮名文字をおぼつかなく読んで見てはキャッキャッと笑う。