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えきふにっき

駅夫日記

白柳 秀湖

「新小説」1907(明治40)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页

青空文庫

丈はスラリとして痩型の色の白い、張りのいい細目の男らしい、鼻の高い、私の眼からも惚れ惚れとするような、嫉ましいほどの美男子であった。

私は毎朝この青年の立派な姿を見るたびに、何ともいわれぬ羨ましさと、また身の羞かしさとを覚えて、野鼠のように物蔭にかくれるのが常であった。永い間通っているものと見えて、駅長とは特別懇意でよく駅長室へ来ては巻煙草を燻べながら、高らかに外国語のことなどを語り合うているのを聞いた。

私の眼には立派な紳士の礼服姿よりも、軍人のいかめしい制服姿よりも、この青年の背広の服を着た書生姿が言い知らず心を惹いて堪えられない苦痛であった。私は心から思うた、功名もいらない、富貴も用はない、けれどもただ一度この脂垢のしみた駅夫の服を脱いで学校へ通うてみたい……

ああ私の盛りはこんなことをして暮らしてしまうのか。

私は今ふと昔の小学校時代のことを想い出した。薄命な母と一しょに叔父の宅に世話になっていたころ、私は小学校でいつでも首席を占めて、義務教育を終るまで、その地位を人に譲らなかったこと、将来はきっと偉い者になるだろうというて人知れず可愛がってくれた校長先生のこと、世話になっている叔父の息子の成績が悪いので、苦労性の母が、叔父の細君に非常に遠慮をしたことなど、それからそれへと思いめぐらして、追懐は