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えきふにっき

駅夫日記

白柳 秀湖

「新小説」1907(明治40)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页

青空文庫

の災難を被ることかと思うと、身も世もあられぬような想いがした。

「心配なことはないでしょうか」

「大丈夫でしょう」と言うたが、顔を上げて、

「もう快いのですか」

「ええ明後日あたりから出勤することにしたいと思いまして……」

*    *    *

その夜の月はいと明るかった。

駅長は夕方帰って来たが、きょうは好きな謡曲もやらないで、私の訪ねるのを待っていろいろその日の首尾を話してくれた。

要するに、私の心配したほどでもなかったが、駅長は言うべからざる不快を含んで帰って来たらしい。

この間の工学士というのは品川に住んでいた東京市街鉄道会社の技師を勤めている蘆鉦次郎という男で、三十二年の卒業生であるそうだ、宮内省に勤めた父親の関係から、社長の曽我とも知己の間でこの間の失敗を根に持ってよほど卑怯な申立てをしたものと見えて、始めは大分事が大げさであったのを、幸いに足立駅長が非常に人望家であったために、営業所長が力を尽して調停してくれてやっと無事に済んだということであった。

そういう首尾では駅長が不快に思うのも無理はない、私は非常に気の毒に思うて、私が悪いのだから、私が職を罷めたならば、上役の首尾も直るでしょうと言えば、駅長はすぐ打ち消して、かえって私を慰めた上に、いろいろ行末のことも親切に話してくれた。