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がいこつのくろんぼ
骸骨の黒穂
夢野 久作
「オール読物」1934(昭和9)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,160 字 · 28 页
それは面白いのう。あの藤六が死んで、舎利甲兵衛と黒穂の話が評判になりよった時分に、ちょうど避病院の落成式があったでのう。校長の奴、大得意で話しよったものじゃが、何でもこの直方地方は昔からの山窩の巣窟じゃったそうでのう。東の方は小倉の小笠原、西は筑前の黒田から逐われた山窩どもが皆、この荒涼たる遠賀川の流域を眼ざして集まって来て、そこここに部落を作っておったものじゃそうな。藤六はやっぱりその山窩の流れを酌む者じゃったに違わんと校長は云いおったがのう。吾輩は元来、山窩という奴を虫が好かんで……悪魔を拝むだけに犬畜生とも人間ともわからぬ事をしおるでのう。ことに藤六は、あの通りの人物じゃったけに真逆に山窩とは思われぬと思うて、格別気にも止めずにおったのじゃがのう」
「ヘエ。そのお話を今少と早よう伺っておりますると面白う御座いましたが……」
「ふうむ。やっぱり藤六はここいらの山窩の一人じゃったんか」
「ハイ。山窩には相違御座いませぬが、ここでは御座いませぬ。元来、高知県の豪農の息子じゃったそうで御座いますが、若気の過ちで人を殺しまして以来、アチコチと逃げまわった揚句、石見の山奥へ這入りまして、関西でも有名な山窩の親分になっておりました者だそうで……」