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こうげんのたいよう
高原の太陽
岡本 かの子
「むらさき」1937(昭和12)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,558 字 · 17 页
女ばかりで客商売をする家に育った青年は、子供のうちから女という女の憂いも歎きも見すぎて来た。自分の見て来た女達が同じように辛い運命から性を抜かれた白々しさ。そういう女性のなかに育った青年の魂は、いつか人生を否定的にばかり見るようになった。あらゆる都会の文化も悦楽も青年の魂を慰めなかった。年少から酒を嗜むようになったのも、その空虚な気持ちを紛らすためと云ってよかった。
「だが不思議ですね。それほど女性の陰に悩まされた自分でありながら、さて女性に離れて仕舞うことになると、まるでぽかんとして仕舞うのですね」
それは恰度菓子造りの家の者が菓子に飽き飽きしながら、絶えず糖分を摂取せずにはいられないようなものではなかろうか。
「菓子造りの家の者が砂糖の中毒患者というなら、僕は女性の中毒患者とでもいうべきでしょう」
青年は苦笑した。
早く死んだ青年の父は、天才の素質を帯びている不遇な文人画家であった。その血筋は息子の青年に伝えられた。
「僕にはこれで高邁な美を望む性格も、それを執拗に表現しようと努力する根気もあるんです。だが、その気概に邁進しようとすると、すぐ蝕まれている一面が意識されて、崩折れて仕舞うんです。