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たかおざんげ

高尾ざんげ

豊島 与志雄

――近代説話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,252 字 · 21 页

青空文庫

酔ったはずみに、二人きりの時、そのことを話してみましたら、檜山さんは急に真顔になって、考えこんでしまいました。普通なら、生意気言うなと怒られるか、豪いことを言うぞと笑われるか、どうせ碌なことにはならないのに、聊か調子違いの結果になってしまったと、菊千代はあとで思いました。

戦争がすんで花柳界が復活してから、熱海の移転先から戻って来て、我儘なお座敷勤めをしている菊千代から見れば、客筋はたいてい、口先ではいろんなことを言いながらも、戦争のことなどはけろりと忘れてしまってる、心身ともに肥え太った人たちのようでした。彼女が五年間世話になっていた梶さんの、一番親しい仲間の一人だった永井さんまでが、やはりそのようでした。いくら酒席の冗談にしても、あまりにひどすぎることを、彼は平気で言ってのけました。

「ねえ、菊ちゃん、君はまだあいてるんだろう。空家払底の当節だから、用心しなけりゃいかんよ。うっかり人をもぐりこませたら、もう決して立ち退かないからな。」

それが、大勢の人中でのことでした。菊千代は捨鉢につっかかってゆきました。

「ええどうせあたしは空家ですよ。月ぎめの人でも、年ぎめの人でも、先口に貸してあげるわ。