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かみ
髪
織田 作之助
「オール読物 十一月号」1945(昭和20)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,381 字 · 17 页
後年私は、新聞紙上で、軍人や官吏が栄転するたびに、大正何年組または昭和何年組の秀才で、その組のトップを切って栄進したという紹介記事を読んで、かつての同級生の愚鈍な顔を思い出さぬ例しは一度もないくらいである。彼等が今日本の政治の末端に与っていると思えば、冷汗が出るのである。
しかし、私は何も自分が彼等にくらべて利巧であると思っているわけではない。周囲に阿呆が大勢いてくれたおかげで、当時の私はいくらか自分が利巧であるように思い込んでいたことは事実だが、しかし果して私は利巧であったかどうか。
私は生れつき特権というものを毛嫌いしていたので、私の学校が天下の秀才の集るところだという理由で、生徒たちは土地で一番もてる人種であり、それ故生徒たちは銭湯へ行くのにも制服制帽を着用しているのを滑稽だと思ったので、制服制帽は質に入れて、和服無帽で長髪を風に靡かせながら通学した。つまり私は十分風変りであったが、それ以上に利巧でなかったわけである。
このような私を人は何と思っていたろうか。ある者は私をデカダンだと言い、ある者は大本教を信じているらしいと言った。しかし私は何ものをも信じていなかった。