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まぞう

魔像

林 不忘

新版大岡政談

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页

青空文庫

閑人の多いその頃のことである。何々番付という見立てが大いに流行って、なかにも、美人番付には毎々江戸中の人気が沸騰した。その美人番付の筆頭に据えられたお園である。顔を見ようというので、金に困らない連中まで遠くの方からわざわざ伊豆屋へ質を置きに来る。一日に二度も三度も油を買いにくる。おかげで店はますます繁昌したが、そこで伊豆屋伍兵衛は考えたのである。

自分はもともと百姓の出だ。それがかくして土一升金一升の江戸で大きな間口を張る商家の主となったが、今度は一つ、何とかして娘のお園を名のある侍へ縁づけて、お武家を親類に持ちたいものだ。自家と対等、或いはそれ以上のところからさえ、町家なら、養子の来人は降るようにある。何しろ江戸一の美女に二十五万両の身代が随いているのである。自薦他薦の養子の候補者は、選りどり見どりだが、苦労を知らない大家の次男三男を養子に貰ったところで、よくいう、初代が『初松魚伊勢屋の前をすぐ通り』二代目へ来て『二代目の伊勢屋の前に初松魚』、三代目となると『売家と唐様で書く三代目』という川柳の通りに、悪くすると家の落目を招くにきまっている。それよりは、お店の番頭の中からでも見どころのある男を選んで、それに他家から嫁を貰い、夫婦養子をしたほうがよくはなかろうかと、伍兵衛は、女房のおこよとも相談してそう