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まぞう

魔像

林 不忘

新版大岡政談

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页

青空文庫

お六は、急ぎ反対側の角へ隠れソッと覗いていると、鏡丹波を先頭に、多くの門弟が廊下を来て、部屋のまえに立ちどまった。

「先生ッ!」中から障子があいて、ノソリと造酒。

「何だッ! 騒々しい」

一同はベタベタと板廊下にすわって、鏡丹波が、言った。

「出ました先生、今夜は、四谷こぶ寺うらの横地半九郎殿方へ遊佐と春藤と私と三人、夜番に頼まれて行っていましたところが、ただいま、神尾喬之助が現われまして、イヤどうも大変なチャンバラ……」チャンバラなどとは言わないが、そんなようなことをいう。聞いていた山城守は、ギックリしながらも、

「サ! いよいよ其許の出幕じゃ。約束どおり――」

すると、大きく合点いた造酒、一同を振り返ってガミガミ呶鳴った。

「おれが行く迄のことはない。三羽烏の一人を立てて、みんなで行け!」

「しかし先生、大矢内氏も、比企氏も、天童氏も、三人ともぐっすり眠っていて、いくら起しても起きないんで……」

「そうか。起すには起し方があるのだ。三人のまくら元で、刀を合わして音を聞かせろ」妙な眼覚時計だが、とにかく、こいつをやったのだろう。間もなく、三羽がらすの一人天童利根太郎を真っ先に、鏡丹波を案内に立てた同勢五十七名、瘤でら裏へ駈けつけて神尾喬之助(実は茨右近)を一潰しに潰そうと、揉みに揉んで深夜の巷を飛んでいた。