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まぞう
魔像
林 不忘
新版大岡政談
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页
「長岡うじ、いかが召された?」
頼母は、黙って、手にした忌中札を突き出しながら、
「これが貼ってあった――居間の障子に。開けてみたが、誰もおらぬのじゃ。コレ、この通り、まだ濡れておる」
ドレドレ、見せろ――と、一同がザワザワと起ち上って頼母の周囲に集ろうとして! フと気がついた。末席である。
何時の間に来たのか、それとも、初めから評議に加わっていたのか、その末席に、両手をついて、ジッと平伏したきりの一人の人物がある。どうして今まで、誰も気がつかなかったろう? 畳に手を突いて動かない姿……裃こそ着ていないが、あの元日、番部屋でそうして嘲弄を受けていた神尾喬之助の態度と、寸分違わないではないか。その微動だもしない伏像に対して、一同は、声もなく眼を見張った。
影と影二人法師
一
「ややッ! ここにおる! ほら! ここに居るぞ何者か……」
叫び揚げたのは、博多弓之丞だ。背後へ拡げた両手は、空気を押えるような手つきだ。そのまま、ザザザッ! 畳をならして蹣跚き退った。
池上新六郎、山路重之進、飯能主馬、横地半九郎、妙見勝三郎……等、合計十三名の御書院番士と、源助町の助軍一統、思わず、ぱッ! 潮の引くよう、起ち上っていた。